はじめに
大規模店舗が増え、中小のスーパーや商店街が元気を失ってきたと言われて久しくなります。近年では、ECサイトの急速な普及により、実店舗が時代遅れのように扱われることも増えてきました。今後はVRやARなどの技術が進化し、仮想空間上でのショッピング体験が展開などもあるかもしれません。一方、現在の大規模店舗を展開している勝ち組は、川下、川上の統合を続けプライベートブランドやサプライチェーンの上流との統合を進め、さらなる効率化を図っています。
小売業を取り巻く環境やIT技術はすごい勢いで変化しています。一方で、インターネットの知識や新しいプラットフォームを使うことで逆に、お店が同質化し過当競争に陥る会社も少なくありません。例えば、インターネットショッピングではSEO対策で店舗サイトに誘客するのが常套手段ですが広告費をかけられるところが圧倒的に有利にできている上に、同じ条件で競争しています。WEBマーケティング専門家は多くいますが、再生数やPVといった数字的な目標をあげることに注力するあまり売上アップという本来の目標が達成できていなことのほうが多いようです。
このページでは、新しいお店を計画している人に向けて、同質化を避け、顧客に選ばれるためのポイントを、普段私がセミナーなどでお話ししている内容に基づいてまとめております。少しでもお役に立てれば幸いです。マーチャンダイジングから考えて、WEBなどの活用方法もまたかわってくることと思います。
マーチャンダイジングの定義
マーチャンダイジングは、英語でMerchanDising略語はMDが用いられます。主に製品を生産し、消費の終了までの商品の流れを計画し、コントロールする事に必要とされる諸活動を指しています。マーチャンダイジングの定義は田島先生の定義が多く引用されています。
(田島義博「マーチャンダイジングの知識」)
大まかな理解は、マーチャンダイジングは、商品を適切な場所、適切なタイミング、適切な価格で顧客に提供するプロセスを指します。これには、商品の企画・開発から販売促進、ディスプレイ戦略、在庫管理なども対象となっています。
これには、「製造されたものは店先に並ぶまで商品ではない。」という考え方があるからです。
マーチャンダイジングに含まれる「5つの適正」
川上のメーカーでは”売りたい”製品がつくられ、川中の卸では、多くの在庫を抱えています。川下にある小売業で消費者が買ってもらえるように活動することが求められますが、川上のメーカー、川中の卸のことだけを見ていても物は売れません。消費者が欲しいと思う商品「適品」、タイミング「適時」、金額「適価」、数量「適量」、場所「適所」(5適)を小売りがコントロールすることでモノが売れていきます。
基本1. 適正な「商品」
適正な「商品」を考えることは、店舗においてもっとも重要な活動です。消費者のニーズに合致した商品がなければ、「品揃えが悪い」と思われてしまいます。「品揃えが悪い」と思われれば、リピーターになる可能性は低く、安定した売上は見込めません。また、単純に商品の数を揃えればいいわけではなく、市場を理解してニーズのある商品をそろえることが重要です。
基本2. 適正な「時期」
商品には季節や時間帯によって、売れ行きが変化するものがあります。人の感じ方は時期によって変わるので、それに合わせた商品を販売しなければなりません。例えば、夏の暑い日に暖房器具であるファンヒーターはあまり売れません。また、時間帯によっても変化し、アルコール飲料は朝より仕事帰りの夜に需要があるなどです。
特に季節を逃すと在庫として残ってしまうので、仕入れ・販売のタイミングはしっかり考えなければいけません。
基本3. 適正な「場所」
商品を陳列する場所にも適正があります。「どこに何があるのか」わかるように配置すると消費者は気持ちよく買い物を楽しめます。そんな適正な「場所」を考えるうえで、どこから仕入れるか、どの店舗で販売するか、どこに商品を陳列するかなどがポイントです。特に消費者の動線を意識しながら「どこに商品を陳列するか」を考えれば、消費者にとって最適な場所を見つけられます。
一方、店舗が消費者に対して「できるだけ長く店舗に滞在してほしい」と考えることがあります。
もちろん当然の心理ですが、いたずらに滞在時間を長くすることは消費者離れを起こしかねないので注意が必要です。
基本4. 適正な「数量」
消費者のニーズをとらえて、売れる商品を置くことは大事ですが、在庫不足や在庫過多には注意しなければいけません。定番商品の在庫が不足しいつも売り切れていれば、消費者は「品揃えが悪い」と感じてしまいます。また、在庫を抱えすぎにも注意が必要です。在庫は、売上が上がらない限り店舗の借金ともいえます。したがって、販売戦略に合わせて在庫不足や在庫過多にならないバランスを保つことが重要です。
基本5. 適正な「価格」
いい商品を適切な場所に陳列しても、適正な「価格」でないと意味がありません。消費者にとって価格は、安ければ安いほうがうれしいものですが、利益が発生しないと店舗として立ち行かなくなります。値決めはとても難しい判断が必要となります。
何をもって”適正”とするかほんと難しいのですが、マーチャンダイジングの活動はまさに適性をまもるための諸活動が組み込まれています。
「今後のマーチャンダイジング戦略を見直し、次のステップを踏み出しましょう。」マーチャンダイジングのステップをテーマごとにまとめていきますので、よろしくお願いいたします。