商品計画の進め方(全体的な流れ)
商品計画は、売上目標に沿って、”どこに(フロア子ケーション)””何を(商品)””どれぐらい(量)””いつ(販売時期)””どのように(配置)”を適切に行うことです。「5つの適正」は何をもって適正とするかがとても難しいものですが、商品企画から販売まで、PDCAをしっかり回すのことが肝心です。
1.分析と評価(前年の振り返り)
マーチャンダイジングの商品計画の最初のステップは、分析と評価です。具体的には、前年同期比(昨対比)のデータを使用して、販売実績やトレンドを評価します。昨年と今年の販売データを比較することで、売上が伸びている商品や不振な商品を明確にし、次年度の計画に反映させます。どのポジション(組織上の地位)で分析評価をするかによりますが、大きな会社では、地域ごとの商品部と経営企画部門などが経営数値とともにやりますが、中小小売業だと経営者と店長と売場スタッフといった感じです。
どんなデータが準備できているかで分析データの粒度も異なっていますが、対前年比は月別や週別と売場単位で把握されます。また、商品計画では小売では年間54週で計画を立てているので、POSの実績もあるので加工してつかいます。
2.商品計画の重点目標の設定
商品計画の次は、重点目標の設定です。ここでは前段階で行った分析結果をもとに、各商品カテゴリーや特定の商品の目標を具体的に定め、全体の売上や利益目標に沿った計画を策定します。重点目標の設定は、企業の成長戦略に大きく寄与するため、具体的かつ実現可能な内容であることが重要です。
たとえば、プライベートブランドの強化を目標に掲げることで、自社商品による差別化を図り、競合他社との差別化とコスト競争力の向上を目指します。また、近年の消費者のライフスタイル変化に伴い、惣菜の販売強化も重要です。特に即食ニーズに応える商品を増やし、忙しい消費者層をターゲットにします。さらに、季節性の高い商品、たとえば夏場にはビールの販売促進を強化することで、シーズナル需要を取り込み、売上を最大化する施策が考えられます。
これらの重点目標を設定する際には、商圏の特性を踏まえ、商品分類を整理し、現実的かつ競争力のある商品ラインアップを提供し、全体の事業成長に貢献することが求められます。
3.商品計画の作成
商品計画は、品揃えの”幅”と”深さ”のバランスを考えます。幅は商品カテゴリーの多様性を示し、深さは各カテゴリー内の選択肢の豊富さを指します。たとえば、幅広い品揃えは多様なニーズに応える一方で、深い品揃えは特定の商品における消費者の選択肢を増やします。このバランスが崩れると、在庫の偏りや販売機会の損失が生じる可能性があります。
商品計画では、”定番商品”と”提案型商品”も考慮します。定番商品は安定した売上を確保する基盤となりお店の顔です。提案型商品は消費者の新たな需要を引き出すチャンスやお店の特徴を伝える商品です。このバランスを考慮することで、売上の安定と成長の両方を実現できます。
商品の維持や収益性の向上も重要な側面です。商品のプロダクトライフサイクルを考慮し、投入タイミングや廃止時期を適切に判断することで、商品の鮮度を保ち、売上の最大化を目指します。さらに、商品ごとの役割を明確化することで、各カテゴリーが果たすべき役割や目標を設定し、より効率的な商品計画が可能となります。
4.計画実行手段の決定
計画を実現するための具体的なアクションを設定します。行動計画なので、何を、いつ、どこにといったものです。主には、仕入れ先企業の選定やカテゴリー別の売場の配置、販売促進策の策定、売場作りなどです。小売業における特徴の一つとして、計画は54週で行います。年末商戦や季節要因を考慮した長期的な計画を可能にし、在庫管理や需要予測の精度を向上させるための重要な手段です。
仕入先企業の選定
信頼できる仕入先との長期的な関係を構築することで、安定した供給とコストの最適化を図ります。また、商品の質や配送スケジュールも仕入先選定の重要な要素となります。
カテゴリー別の売場配置
カテゴリーごとの売上や利益率を考慮し、売場でのスペース配分を最適化することで、消費者が商品を見つけやすくし、売上向上を促進します。
月別売上指数
過去の売上データや市場トレンドをもとに、各月ごとの売上目標を設定し、季節変動やプロモーションを効果的に活用します。これにより、年間を通じた安定した収益確保を目指します。
実行フェーズ
計画の実行です。販売計画、仕入計画などが計画通りオペレーション(発注、品出)などを行って行きます。ただし、計画はあくまでも計画値です。気温が少し変わるだけで、売上がかわるものも多くあります。夏場のアイスやビールを始め、冬は鍋物などです。仕入れだって、ちゃんと仕入れができるとは限りません。最近では地震や異常気象、企業の不祥事などで商品が供給されないこともあり、小売業さんは非常に苦労しているとおもいます。こういったことがあっても、常に分析しながら適切な調整が現場には求められます。ほんと頭がさかります。
商品計画のまとめ
マーチャンダイジングの成功は、計画段階だけでなく、実際の現場での実行と調整にかかっています。分析と評価を基にした商品計画の策定から、具体的な実行手段の決定、さらには計画の実行に至るまで、一連のプロセスはすべて連動しています。市場の変動や予期しない外部要因にも柔軟に対応しながら、PDCAサイクルを回し続けることが、長期的な成功の鍵です。小売業は日々変化する環境の中で進化を求められる業種であり、常に現場での迅速な判断が求められます。