取引先の紹介は鬼門
商工会議所や支援機関の無料の経営相談をしていると、取引先を紹介して欲しいといった要望は多くあります。しかし、この”取引先紹介”は支援現場で対応が難しいテーマの一つです。談者の中には「一声かけてもらえれば」と考えている方も多いのですが、実際には支援現場で安易な紹介はほとんど行われていません。相談に来られる理由は、大手と取引していたので安泰と思っていたのに急に仕事が途絶えたり、競合に仕事を奪われたり、徐々に仕事がなくなってきているなど様々ですが、多くのお場合、緊急対応で他に相談するところがなくて支援機関にやってくるというケースです。創業期の人は、営業ができていないことも多々あります。
何とかしてあげたいと思う気持ちも半分、予見し対策できなかったものだろうかという気持ちもありながら面談の対応をしています。まず期待しているところが、商工会議所や支援機関の声掛けならうまくいくと思っているようです。話は、紹介してほしいというシンプルなはなしなのですが、難しい話なので失敗も多いです。失敗と言っても、アンケートに不満足と書かれるものがほとんどですが、中には面と向かって「あんたとは話にならない。」と面と向かって言われることもあります。
それなりに、相談件数も多いのですが、失敗ケースも多いです。私個人ではなく、聴いている範囲で失敗ケースを集めてみました。
経営相談で失敗ケース
できない理由をいう(正面突破)
最も多い対応ですが、相談者との認識のズレが大きく、トラブルになりやすいケースです。「紹介者した後にトラブルが発生した場合、公的機関としては責任を負えないので、できません。」というと「ここは経営の困りごとの相談ができるところではないのか?」と詰められます。電話も長引きます。紹介するのは経営相談ではないことを理解してもらうと理屈っぽくなりますし、そもそもそういった理屈っぽい話は、聴いてもらえずにトラブルになります。だから、「トラブルの素ですので、お困りとは思いますが、それはできない。」というだけにとどまります。
電話の主は、紹介してもらうことを経営相談と思って電話してきているので、話は折り合わないです。販路拡大の支援=取引先の紹介が頭の中にあれば、いくら言葉で説明しても納得はしてもらえないので、アンケートに「役に立たなかった。」と書かれてしまいます。たしかに、紹介をして欲しいということに対しては、お役に立てていませんので事実ではあります。
交流会などをお伝えする(矛先を変える)
紹介ではなく行動を促す対応ですが、即効性を期待する相談者には不満が残りやすいケースです。他機関の名前をだして、交流会をやっているので「ここに行ってみてはどうですか。」と提案するケースですね。ただし、外部の団体とは言え、どこもマッチングをやっているところはないと思うので、インターネットで検索して人脈を広げるために交流会などに参加することをお勧めします。また、信金の担当者がいれば相談してみてはとお伝えしてみることもあります。
これも同じようにアンケート結果はあまりよくないです。時間がかかることに加えて、営業の為に紹介してほしいと思ってきているのに、交流会だと遠回りと感じるからです。
営業目的で交流会に参加しても敬遠されるので、うまく立ち回って欲しいところですが営業ベタなひとのほうが多いので心配しながら送り出します。
営業ツールを提案する(本筋)
小規模事業者持続化補助金などがあれば、計画をたてて長期的(1年ぐらい)に取り組む方法などもご提案できます。本来、販路構築ができていないので計画作りで納得していただけると支援するのもやりやすくなってきます。なんせ自身で考えてもらうアクションプランができるわけなので、前向きに取り組んでくれることが期待できます。このケースの場合、矛先が補助金獲得に変わるので、アンケートが悪くなることはないのです。ただ、最近は補助金も回数が減っているので、ご案内できるものがなければ、落胆させてしまいます。
資金的に余裕があれば、ホームページなどを準備するなどですが、ホームページを作ってすぐに顧客が掴めることはあまりないです。HPは制作だけでも時間はかかります。そこから新規の問い合わせがくるだけでも相当の時間がかかります。それもちゃんと見てもらえるホームページになっていればの話しです。
この他、ものづくり企業であれば、ジェグテックといった中小機構の運営している事業者紹介サイトへの登録などもお勧めします。時間はかかるものの、商品サービスを見直しながら売れる方法を考えていくので成果はでてくるので、いっしょに頑張りたいところですね。
取引先紹介は、どうして難しいのか?(構造的問題)
「支援機関や商工会議所が取引先を紹介できない理由」は、個々の担当者の判断ではなく、構造的な問題によるものです。窓口に突然来て紹介してくれといってもちゃんと仕事ができる人なのかもわからないので紹介しにくいというのが根本的な理由です。そもそも緊急でやるような仕事はリスクも高く受けたとしてもほとんど成功しません。商工会議所は、会員組織なのでよっぽどマッチしそうな案件であれば、こちらから声掛けをすることはありますが、窓口にいきなりきても対応困難です。
ここにボタンの掛け違いはなくなりません。相談者は緊急対応できているのに、正論(販路を構築する)で対応するというのがボタンの掛け違いですね。歯が痛いから歯医者にいったのに、毎日丁寧に歯を磨きましょうと言われたら困りますもんね。
ひとつの取引先に依存してたケースでは、そもそも営業の仕方を経営者が知らないことも多いです。時間をとって外部との交流にあまり積極的でありません。その状態から外部との交流をつくりましょうといっても、「どこいったらいいですか?」ときき返されるぐらい外部との交流が疎い方が多い印象です。
最近は、コロナ、不安定な国際情勢など既存の営業スタイルが使えなくなることもあり、全員がそうだとはいえませんが、販路開拓についてなにもしていないというケースが多いのが原因ではないかと思います。また、SNSやインターネットの活用は確かに重要ではありますが、それ以外にもできることは多くあるのですがやっていないことのほうが多いですよね。
支援機関ができる現実的な対応
取引先紹介を求める相談は、決して珍しいものではありません。しかし、それは多くの場合、販路開拓が後回しになってきた結果として表れます。支援機関にできるのは、「今すぐの紹介」ではなく、「再現性のある営業活動を一緒に考えること」が本筋です。構造的な問題でも触れましたが、緊急対応を要するケースで、そもそも論をするのは難しいとは思いますが、声掛けしながら営業活動を一緒できる関係作りが必要ですよね。

