商店街の支援は難しい。期待されるBID制度とは?

相談事例

商店街支援の難しさ

商工会議所勤務の時ですが、いくつかの商店街組合の方とお話しする機会がありました。商店街は、百貨店、モータリゼーションなど外部環境の変化により元気がなくなり、最近ではこれに経営者の高齢化が加わり、うち手が少なくなってきているのが現状です。若い人に貸して何かをしてもらえればいいのかもしれませんが、地域によっては若者もいないといった現状です。よく聞くシャッター商店街は年々深刻さを増しています。

現状に甘んじているわけでなく商店街組合の方々で商工会議所などで打ち合わせをしています。内容は、県などから配分される補助金の申請や使い道などです。防犯カメラをつけたり、駐輪場の整理をしたり、祭りの支度をしたりとそれぞれの自費負担もありながら補助と合わせて運営している様子でした。ただ、街灯も商店街でつけたものは市では面倒見てもらえないなど、一つの問題が複雑すぎて前向きに進めたくてもモチベーションを維持するのも大変です。

同じ地区で商店街組合がいくつにもわかれていたり、組合長の成り手がいなかったり、組合費の徴収が滞っていたりときっちりと組織を運営するのはほんと難しいものだと実感しました。

商店街活性化を国が掲げても進みにくい課題が山積みされています。

商店街対策は個店対策と同時に進める

(1)商店街対策
商店街は、課題が複雑になりすぎているので、基本に立ち返り外部環境分析、内部経営資源の棚卸といったものを改めて確認。時間はかかりますが基本的なことから始めないといけないのではないかと思います。外部にまかせず自分事ととしてとらえないと先にすすみません。また、どういった方向性か示さないと関係先との調整もできません。組織作りも重要な要素となると思います。次の時代に残すものですので、担い手をうまく見つけ任せていくことができないとうまくいかないでしょう。

・外部環境の分析
人口予測や近隣の商業店の動向、交通機関が提供している情報
・内部の経営資源
働く人の技術も含め、個店の魅力などを無形のものに範囲を広げ棚卸
・組織体制の整備
関係者の棚卸と役割分担

ものを売るだけでなく、時間を消費しコト消費につながるような資源をみつけどのように育てていけるかが課題なのではないでしょうか。

(2)個店対策
商店街の各店舗の経営力アップも支えていく必要があるでしょう。コロナ以降、インターネット通販が伸びる中で物販は非常にやりにくくなっています。なんせ品揃えの種類ではインターネットに勝てないし、家まで届けてくれるので仕事をしているものにとってはとても便利です。やることは、ターゲットの再設定とデジタル化です。既存の顧客は毎年2割へることを前提に、新規顧客の獲得の活動を強化しましょう。それにはPOSを導入し、自社で何が売れているか客観的にみることから始めます。いまは、クラウドPOSだと無料で使えるものもありますので、申込するところからですね。商工会議所などで実機が置いてあるものもあります。操作に不安があれば同じものを申し込みし、気軽にきけるようにしておきます。

また業態転換の模索も場合によっては検討事項です。多くの商店さんと話をしていると経営者自身が、自分の業種業態に対し諦めモードになっていることが見かけられます。小規模事業者持続化補助金、事業再構築補助金などあるのでテコ入れ策を一緒に考えられる支援が求められます。

内閣府地方創生推進室が募集してる、「関係人口創出のための補助金」などがあると面白い仕掛けができるのではないかなと思いますが先の話しですね。

取組を進める中で、新しいターゲットを獲得することや、決してシェアは大きくないですが、買い物の困難者、ニッチな商材、新規商品の販売などにより改善することが期待されます。

将来的な方向性(BID制度とは?)

商店街の補助金は、「地域商業機能複合化推進事業(地域の持続的発展のための中小商業者等の機能活性化事業)」などがありますが、地方公共団体が申請を行うものです。商店街連合会の会議などの様子を伺いながら、行政側ではある程度準備をしているので意見が反映されているか確認していきましょう。ただ、国の補助金をあてにすることも難しくなってきているのが現状ですので、欧米を参考にBID(Business Improvement District)制度の活用も進むと見込まれます。

BID(Business Improvement District)制度は、特定の地区内で、資産所有者や事業者など一定の主体を対象に合意形成がなされ、それらの者の負担を財源に地区管理や活性化事業を行う仕組みのことである。簡単に言えば、分担金制度です。商店街の街づくりなどの基本方針をもとに、公共施設・設備の維持管理から、治安維持・ホスピタリティ向上、景観向上、コミュニティ事業、ビジネス環境などの負担を対象者にもとめるものです。合意形成が進まなくてはいけませんが、整備され、買い物客に楽しんでもらう商店街をづくりのために一歩でも進めておきたいものです。外国資本などが入ると合意形成がすすなくなり、長期的に町全体が混とんとする可能性も出てきます。

BID(Business Improvement District)制度では負担が増えることも予想されますので、個店の経営力アップはこの場合でも必須事項です。また、お金をかける以上、投資と捉え商店街の魅力向上、顧客満足度の向上を図りたいところです。

商店街の活性化は簡単ではありません。地域の特性を理解し、外部環境と内部資源の分析を徹底することが重要です。個店のデジタル化や業態転換も視野に入れ、商店街全体としての組織づくりと方向性を明確にすることが求められます。関係者の信頼関係を高め、制度を活用しながら、一歩一歩着実に進むことで、商店街の未来を築いていけるのではないでしょうか。

商店街は地域の魅力を伝える大切な場であり、その価値を次世代に繋いでいきたいですね。