介護事業所の相談はどんな内容?
介護事業所のIT相談で見えてくる課題は、ITの問題ではなく“人材と業務設計”の課題。DX相談の9割はITの話でない。
先日、ケアプランデータ連携システムのことで介護事業者の経営者の方とお話をしました。経緯は、大阪府の方に補助金があるからわからなかったら相談に行けといわれたようです。自治体で「ケアプランデータ連携システム」を使うと補助金が出るらしく、去年あたりから相談が増えました。
他にも経営相談で介護事業所の経営相談に関わらせてもらうことが良くあります。創業期は、軌道に乗るまでの資金確保。創業後は、人材確保などのテーマが中心になります。最近は、多くはないのですがIT関係の相談があります。生成AIなどで文章関係が楽になったものの、行政手続きが多いので書類が多いのが事業所の特徴です。行政と仕事をすると紙の書類が増えるのかもしれません。
人材確保では、どんな人でもいいんですと言いながら希望を聞くと「経験が豊富で、人当たりが良く、優しい方で、近くに住んでて交通費などの負担が少なくて、ある程度の無理も聞いてくれる方」などなど言いたい放題だったりします。人の課題になるとあまり聞きたくないですが、いまの職員さんへの愚痴など経営者の方もだいぶストレスが溜まっているようです。多くの場合、介護事業所は報酬の上限が介護保険で決まっていて、サービス品質が良くても収入が増えないという構造的な問題もあるので、いい人でも給料で待遇できないし、優秀な人は自分で会社を立ち上げてしまうので、難しい要望になります。
介護の職場には奉仕の精神にあふれたスーパープレーヤーはいます。やりがいを感じて仕事に向き合う姿は尊いものです。一方で、こうした方にはちゃんと報酬として反映されていく仕組みがないと業界が疲弊してしまうのではないかと危惧しています。
相談の処方箋
<創業期>
創業計画書と資金繰り表は必須ですね。また人の採用、場所の準備、指定申請などスムーズに進めていくためにに大きなスケジュールを作成しながらの伴走支援が中心ですが、ここで困るケースはあまりありません。行政書士さんに依頼しているケースが結構あります。指定申請の期間や利用者確保の期間などによって運転資金を十分に取りたいので日本政策金融公庫の創業融資に加えて、制度融資の活用などを進めたりしますが、状況によりますね。創業計画書を書く時間より、場所の確保、指定申請で行政に訪問すること、人集めに時間がかかっていると思います。
<人材確保「短期」>
対処療法になりますが、求人活動について、最近の取組状況を聞いてから、求人票の見直しから入ります。支給金額に加えて「働きやすい職場です。」と書かれた求人票をいくつも見てきました。費用がかけられないのはわかりますが、もう少し具体的に書きたいところですね。「勤務時間、残業の状況、勤務体制、ベテランの有無とかです。」というと、決めていないことのほうがほとんどです。融通を聞かせて働かせたいという胸の内を感じます。求人票は、PRですのでウリをつくって他社と違いを明確に打ち出す必要があるのですが、なぜだか横並びになっています。
少人数の職場では、居心地がよければ離職はさけられます。経営者は自分の会社なので居心地はわるくはないでしょうが、従業員は視点が違います。勤務時間の融通の利かせ方、休日や残業の有無などしっかりと書きたいところです。
正直に書くのを躊躇する事業所は、求人票の前に職場の整備が必要になり「長期的」な取組が必要となります。ある程度、働きやすい職場への整備は進んでいますが、今後は、さらに加速します。みんなが欲しい人材は、働きやすい居心地の良い職場を選び、何もしない事業所は選ばれないという二極化が始まります。
直ぐに見直せる職場環境を考えてもらうことが一番効果があると思います。また、いまいる職員さんの希望を聞いて働きやすいように配慮をしていることなどが思い出せれば、そういう事例をたくさん考えることからはじめないといけないはずです。
<人材確保「長期」>
人材確保は、良い職場づくりという長期的な取組が必要になります。業務整理まで踏み込めている事業所は少ないですが、今後の加算や監査の強化のことを考えると、すぐにでも取組が必要です。淘汰が進むと予想しています。「良い人いないかな」と待ちになるのではなく、良い人材に選んでもらえる環境づくりをすることです。小さい企業であれば、動きがはやいので動き始めればすぐに結果はでると思います。
どこから始めるか?介護の職場でも5Sを入口にすることをお勧めしています。
整頓 (Seiton): 必要なモノの置き場所・定位置を決め、誰でも取り出せるようして探す手間を省く。
清掃 (Seisou): 掃除をして、ゴミや汚れがない状態を保つ。
清潔 (Seiketsu): 整理・整頓・清掃(3S)を徹底し、美観を維持する。
しつけ (Shitsuke): 定められたルールを全員が守る習慣をつける。
整理ではIT化などが役に立つケースがあります。電話の連絡、情報共有で印刷して渡す。紙を捜すなど意外と無駄は多いです。若い人に来てもらいたいのに、DXはちょっとわからないしといっていると早晩立ち行かなくなります。
IT化は難しく考えず、ITで毎回やっていることを1回で終わらせられないかといった視点で、小さな成功事例を作るのがポイントです。いまの従業員さんとともに、ちょっと楽になったという事例を増やすことで、採用にプラスになります。「簡単なホームページをみて、職場の雰囲気がきにいって働くことにした」という事例もあります。
IT化が進まない理由
小さい企業に共通して言えるのですが、ITの直接的な効果は小さいのが当たり前です。でも、働きやすい職場づくりと採用という間接的な効果では大きな効果が期待できます。
大企業では、何万人という給与計算、情報共有による伝達スピードなど大規模IT投資での効果も高く、労働時間を削減する単位がもともと大きいのです。大手企業向けのパンフレットが多いので、「効率化が期待できます。」と言われても違和感を感じるのはあたりまえです。
小規模の会社では、「書類をとりにわざわざ会社にいかないといけない」「いまどき郵便局に切手を買いに行く」「うちの社長LINEだけなんだよね。」という”がっかり感”をなくすのが、IT導入の視点です。いま働く世代は、社会人になる前から、パソコンやスマホになれた人たちです。そういった人たちに選んでもらうためにも、IT化の一歩は必要ですね。
ある職場では、無料のスケジュール(カレンダー)を共有したことで、情報共有が進んだケースもあります。たしかに、突然シフト調整が必要なケースでは、余裕のありそうな人と調整することになると思いますが、聴いて回るよりスケジュールがあることで、ずいぶんストレスがなくなったと聞きました。
個人的には、LINEでの写真をとって送る情報共有はうんざりします。業務の記録や集計には向いていません。昭和を生きた人にとってみたら、若い時にはもっとめんどくさいことは、いっぱいあったと言いたいところですが、タイムラインを読み返す時間でストレス感じないのかほんと不思議です。そういった雑務を得意だからやっとけという若者の仕事のさせ方は、溝が深まる原因の一つです。また電話で済ませることもありますが、介護は利用者さんと接しているシーンもある中で、割って入る電話はストレスでしかありません。会社の情報は、メールなどで見る癖をつけたいところです。
人手不足対策も業務改善から
遠回りに聞こえてしまいますが、給与水準が一定というのが業界の特性であれば、如何に働きやすい職場をつくるのが経営者の仕事です。ドラッガーが示すように、マネジメントの仕事は働く人を活かすことです。忙しさの中で、助けてもらいたいからこそ、有能な職員を採用したいと考えていると思いますが、手持ちのカードで戦うのが原則です。
むしろ、経営改善に積極的であることで、組織には改善がもたらされること、さらに良い人がやってくるという循環が生まれるはずです。
商工会議所などで、IT化をつかった業務改善のセミナーや経営相談をやっていますので、機会があればお気軽にお声がけください。「30分の無料相談」もやってますので、問い合わせフォームよりお申し込みください。

