スポーツツーリズムを事業にするには?(スポーツツーリズムで起業する)

相談事例

スポーツツーリズムとは?

スポーツツーリズムの定義

「スポーツを見に行くための旅行およびそれに伴う周辺観光、スポーツを支える人々との交流などスポーツに関わる様々な旅行のこと」(JTB総合研)と定義されています。①「みるスポーツ」、②「するスポーツ」、③「支えるスポーツ」などで分類できます。それぞれの分類には以下のようなものがスポーツツーリズムと言われています。

スポーツツーリズムのカテゴリーと種類

カテゴリー詳細
みるスポーツプロ野球、Jリーグ、Bリーグ、Tリーグ、リーグワン、オリンピック、世界陸上などの観戦旅行
するスポーツマラソン大会、トレイルランニング、ウルトラマラソン、トレッキング、登山、スキーへのアクティブ旅行
支えるスポーツ地域密着のスポーツチーム運営、市民ボランティア大会支援

近場の日帰りスポーツ観戦も一般的です。サッカーなどはサポーターであれば遠征して応援に行くことや、野球に関してはキャンプなども見にいくことなど、スポーツツーリズム自体は古くから存在していましたが、この言葉が使われ始めたのは最近のことです。
これらに加えて、訪日外国人旅行者の増加などの直接的な効果に加え、周辺産業の振興など間接的な効果も期待できるのでスポーツ庁が施策を打ち出しています。また、スポーツツーリズムをまとめると以下のようになります。

スポーツ備考・背景
ウインタースポーツスノーボードやスキーは降雪のないアジアに人気。中国人等にも拡大。周辺観光(温泉)も人気
アウトドアスポーツ(登山等)豊かな自然を生かす新たなコンテンツの整備も必要。カヌー、トレラン、ノルディックウォーク、ヒルクライム、マウンテンバイク、自転車、ロードバイクなど
マリンスポーツ沖縄などの有数のスポット、スキューバダイビング
スポーツ観戦伝統スポーツ(大相撲、柔道など)欧米、アジアからの幅広い人気、プロスポーツ(サッカー、プロ野球、フィギュアスケート、モータースポーツ
ゴルフツアー中国の富裕層の増加、韓国での人気
各種国際大会キャンプ地東京マラソン、大阪マラソン、英国水泳チーム、中韓のプロサッカー、プロ野球チーム
国内スポーツイベント国体、高校総体、各種協議会(関西マスターズ)

有名であるとか規模が大きければそれに越したことはありませんが、無名であってもインバウンド客を招待することに成功しているケースもあります。大きな大会は中小企業が入り込むのは難しいことが多いので、事業として何かするのは難しいものが多いです。むしろ、小さくても、尖がったイベントぐらいのほうが、それぞれの競技におけるインフルエンサーが話題提供の為に大会に参加してくれる可能性も高くなり、その結果、SNSを通じて拡散することも期待できます。兵庫県猪名川町のトレイルランニングでは、有名なトレイルランナーの招待に成功しているケースもあります。

スポーツツーリズムになりそうな地域資源を探す

地域資源として、スポーツツーリズム関連の事業をこれから盛り上げていこうといった場合は、まずは市場分析として地域におけるスポーツイベントを整理することからはじめます。スポーツは施設がないとできないもののありますが、自然の中でできるものは地元の人の散策コースになっていることも多くあります。そういったものがないかまず確認してみましょう。

瀬戸内海の自転車ロード、淡路島のアワイチ、琵琶湖のビワイチなどが関西ではメジャーです。最近は和歌山のJRでは自転車をそのまま持ち込める車両があって人気ですよね。大企業が絡み行政担当者が行う事業とビジネスとしてスタートする場合は規模も変わってくると思います。逆に、マイナースポーツであっても、小さく始め地域性を活かすのであれば自ら推しポイントをしっかりと伝えることからですね。
ビワイチは、サイクリストなら知っていたものなのですが、最近ではコースマップが整理され、レンタサイクルなども整備されているので徐々に規模が大きくなってきているようです。

ターゲットと提供価値を一緒に考える

地域資源を整理した後に、ターゲットとターゲットのニーズを調査します。データ収集が難しいのですが、地域資源を調査している時に、訪れる人の雰囲気などを話し合って決めるといった形です。男性客、年配などターゲットが幅広くなってしまうのは仕方ないのですが、テストして実際に顧客がいるか検証できる形にしておきたいものです。必要であれば、通行量調査などを実施して、仮説の検証をできるだけ実施しましょう。

また、提供価値はターゲットを決めてからそのターゲットがもとめるものです。スポーツ関係ですと、達成感、感動、特別感といったものが考えられます。マラソン大会が完走メダル、フィニッシャータオル、完走証を渡すのは達成感を形にしたもものと私は理解しています。

何を求めているかは、アンケート調査が中心になります。アンケート調査実施ませに、ターゲットがが良く写真をとっているスポットをインターネットで調査しておきたいところです。SNSなどを見ながら何に感動をしているのか、共有したい景色はなにか、自らの体験などを踏まえて考えていきます。どんなキーワードが検索されているのかなども参考情報になるでしょう。

スポーツツーリズムにおける事業ドメインを決める

次考えるべきは、自分が何をするか、こういった地域資源と組み合わせて事業ドメインです。

事業ドメインは、顧客セグメント、顧客への提供価値、独自能力が発揮できる技術ノウハウで決めます。

顧客セグメント顧客への提供価値独自能力
地域資源として発見したスポーツイベントに来てくれる顧客は誰か?地域資源として発見したスポーツイベントに来てくれる顧客が喜ぶことは何か?提供価値を作り出すには、自分のどんな能力を使えばいいか?

個人が事業としてするには規模も小さくなるものと思います。近くのサイクリングマップ制作などがスタートになりそうです。これは、デザイン会社やWEB制作関係の会社が地域メディアとしてスタートしているようなケースが結構あります。個人でも情報発信のツールを持つのはいいことだと思います。小さくても提供価値さえはっきりしていれば、誰かに響く何かがあるはずです。

 

キャッシュポイントを考える

最後に、キャッシュポイントを作ります。キャッシュポイントの一例です。オリジナリティーは高めたい一方で、消費者心理を考えるとキャッシュポイントは既存ビジネスに近いところでまとめたほうが無難ですね。

カテゴリーキャッシュポイント詳細
みるスポーツチケット販売試合やイベントのチケット販売、シーズンチケットや年間会員権
メディア権利放送権、デジタルコンテンツ
スポンサーシップユニフォームスポンサー、スタジアムや施設の命名権、イベントスポンサー
マーチャンダイジング公式グッズ販売、ライセンス契約、ECサイト
飲食・物販スタジアム内の飲食物販売、イベントグッズの販売
ファンクラブ会員費、特典販売
イベント主催スポーツイベントの開催、関連イベント
賞金・報奨金大会賞金、スポンサーからの報奨金
デジタル・ソーシャルメディア広告収入、有料コンテンツ、情報誌
不動産・施設運営スタジアムや施設のレンタル、観光地化
賭博・ベッティング公式ベッティングパートナー
支えるスポーツコーチング・講師業パーソナルコーチング、チームコーチング、講演活動、オンラインコーチ
スポーツ支援サービストレーニング施設の運営、栄養指導、メンタルトレーニング、フィジカルセラピー、スカウティングサービス
デジタルサービスマッチングサービス(トレーナーとトレーニー、施設と利用者、応援者と競技者)などインターネット上のサービス
するスポーツ大会参加参加費、賞金、スポンサーシップ

スポーツツーリズムは官民が共同で行う事業が多く、業者など枠組みが決まってやりにくいとおもいます。
一方で、消費者ニーズも多様化しており外国人のニーズに寄り添った事業は民間事業者が担い手となると考えられます。”やりたいこと”、”できること”、”ニーズのあるところ”で事業を探します。スポーツツーリズムを通じて、地域とスポーツの新たな可能性を切り開いていくことが、起業家としても求められる使命です。

 

以上