回答に困る経営相談(個人事業主の税金について)
経営相談を対応していると回答にこまるものもあります。「何をやったら儲かりますか?」という相談もあります。できること、やれること、求めらえることが基本ですが、主体性がなければどれも難しいでしょうね。
税金の計算はみんな苦手な分野
さて、これ以外でも困るものがあります。同じ立場の方(経営相談を支援機関でする中小企業診断士)と話をするのですが、やはり同意見が多数です。何かというと、税金と税金の計算です。税理士さん、社会保険労務士さんだとサクッとできると思いますが、慣れていない私がやると昨年の年収や家族構成、住んでいる場所などでおおよそは計算できますが煩雑です。私も個人事業主で独立する時に計算をしたので、めんどくさいのはよくわかりますが、調べながらやったほうが良くわかります。
起業相談といっても、幅広い質問があるのでこういったケースでは、用語を説明しながらになるので、時間もかかるし、きっと受けても情報量が多くなって途中から入ってないと思われることもあります。行きつ戻りつ説明して、「最後に年収が増えたらどうなります?」って聞かれた時には、「同じやり方で自分でやってみましょうね。」と言いたくなります。こういった相談は電話相談のケースが多く、向こうの「ため息」などが聴こえてきたりしてストレスもたまります。しまいには、相手の事業内容が不明確だったりしますので、事業内容を決めるのが先ではないかと思います。それにいまは便利な動画があります。
とある会議所で「それは経営相談じゃなないですね。事業で稼げるようになったら相談に来てください。」と職員さんが対応しているのを見たことがあります。
さらに、「年収の壁・支援パッケージ」なるものが発表されたので、さらにややこしくなりそうです。もっとわかり易い仕組みにしてくれれば、良いのですけどね。
個人事業主の税金について
さてさて、個人事業を開始すると発生する税金には、①所得税、②消費税、③住民税、④個人事業税といった種類があります。それぞれ説明をしておくと
①所得税:所得税は稼いだ所得に対する税金です。
(計算式)課税所得=収入-経費-所得控除
(課税所得)×税率-税額控除=所得税額
所得控除は、計算を見てもらうとわかるのですが、税額計算の前にマイナスしているので所得税の負担が軽減される制度です。「会社員で馴染みがあるのが生命保険料控除で、個人事業主で青色申告申告をした方が良いですよと伝えるのは青色申告特別控除というのがあるからです。」と関連のあるものを説明します。全部で15種類ぐらいあるので全部説明していたらこれだけで面談が終わってしまいます。税率については早見表などを国税庁のホームページなどを参照して一緒に見たりします。
こちらは課税所得が年に48万円※を超えると支払い義務があります。
※所得控除として、基礎控除部分48万円が引かれる為です。
②消費税
これも3月に申告して納税するのですが、前々年の売上額が1,000万円以下の場合は免税されるます。さらに、特定期間(前年の半年)で1,000円を超える場合は免税事業者でなくなるケースもあります。
良く聞かれるのが、「10月開業したら前々年は、来年の9月までの1年ですか?」といった具体的な期限を聞かれるケースがあります。すごく相談者の方の不確定要素の中でしゃべっているので、「1,000万超えそうな事業なんですか?」と聞き返したりもするのですが事業がはじまっていないのであればまだ”杞憂”ですよね。ほんとにもうけるかもしれませんけど。始まってから税理士さんに確認しても遅くないと思います。どうせ稼いだら払わないといけないのです。
さらにインボイス制度が始まったのでさらに最近は説明が難しいです。免税事業者であっても今後は税金を納める必要がでてきました。この税金を納めないといけないというとかなりセンシティブに反応するのでほんと要注意です。
③住民税
都道府県と市区町村の公共サービスを維持するために納める税金です。6月に市区町村から納付書が届きます。1月に住民票の住所に在籍している市区町村から来ます。
均等割(利益の金額に関係なく誰もが負担する金額)+所得割(利益金額に税率をかけて計算する)の合計額で、均等割りが5,300円ぐらい、後は所得(控除額もあります)に応じて10%かかってきます。
計算式:均等割+所得割税額
(所得金額-所得控除額)×10%-利益控除額
市区町村ごとに納める金額や税率が異なるケースがあるので、調べながら計算してもらうようにしています。計算間違いなどで間違ったことを伝えることは避けたほうが無難というか、税理士業務になるのでやったらダメですよね。
「均等割部分と所得割部分があり、扶養家族がいないで一人で生計をたてられている場合、年間所得45万円を超えると支払い義務が発生します。」と説明すると「家族がx人で、父親と暮らしているのですが、その場合払わないでいい金額はいくらですか?」など個人の事例をもってきます。
きっと市役所にはこんな問い合わせが日々いっぱいきているように思います。税金が高いと敏感に感じる人が増えたということでしょうね。
商工会議所で”マル経融資”などをやってた時は、均等割り部分のみの住民税を払っている事業者も結構ありました。融資を申し込む方は「もっと稼いで税金も納められるなら納めたい。」と思っている方もいたので、相談内容は一様ではありません。ただ、経営相談なので、「儲けたいです。」という相談のほうが、理想ではあります。
④個人事業税
地方に納める税金です。
計算式:事業税額=(収入金額-必要経費-専従者給与-事業主控除(290万円))×税率(※)
もうお分かりかとおもいますが、290万円の控除があるので収入が290万円以下であれば個人事業税は払わなくていいです。
コロナの時に、個人事業税の納付書が届いてなくてなくしてしまったのかと思って、県民局の納税課に電話したら「コロナの給付金で個人事業税の対象者が増えて、納付書発行がおくれています。」と言われたことがあります。発行が遅れたら支払いも遅れていいわけでもなく、担当者も詫びるような口調でもありません。
※所得税や住民税などのように所得控除がありません。また税率は都道府県や業種ごとに税率がきまっています。兵庫県の場合は下記の税率です。コンサルタント業は5%ですね。
相談時の注意事項
どこまで嚙み砕いて説明するかいつも気になりますが、簡単すぎると相手を馬鹿にしていると思われてしまわないか心配になります。また、税理士資格がないのであまり税理士さんがネットで説明している記事や動画を参考にするといいですとととどめています。探し方などを伝えるのも仕事と思います。
また、情報収集だけに終わらせないために「資金繰り表」を作ってみることをお勧めしています。これを作れば、いつどんな税金がでていくのか準備ができるのとキャッシュがあることの大切さも伝わるし、売上の計画が先にあることがわかる為です。
税理士さんとの相談会などがあればそれを利用することをお勧め。
ある程度、業種や事業内容、数値計画などのあったほうが実りのある相談になります。
個人事業主の場合、何もわからないから相談に来ているのに、「勉強が足らないので、相談に値しない。」といった感じが気取られると、後々のアンケートも恐ろしく、以後、相談対応に呼んでもらえないこともあります。
いくら備えても、相談者の方のキャラクターによりいろいろ難しいケースも想定されます。事務局の方と相談し、こういった情報収集で来ている方への処し方は事前に話し合っておいたほうがいいですね。
よりよい相談になることを祈願しております。