これで安心!出向起業等創出支援事業のポイント整理

相談事例

1.出向起業等創出支援事業について

令和4年度の「出向起業等創出支援事業」の募集が開始されています。(2022年8月現在)大きな組織ではやりにくい新規事業を後押しする制度としてはじまったようです。また、大手に集まりがちな優秀な人材による起業ということで、人材を開放する意味でも面白い制度です。ただし、この制度は大企業を前提としているわけではありません。補助金上限額が1、000万円、補助率が1/2と他の補助金と比べると少し補助率が低くなっています。ものづくり補助金でも申請する枠によっては、1/2のものがありますので、特別低くなっているわけではありません。

出向起業補助金
#出向起業 スタートアップへの出向・出向起業等により、所属組織の外で将来の新規事業創造に資する経験を積む大企業等人材の創出支援を行う補助事業を実施します。

ホームページでは、起業家の紹介がありこちらも特徴的です。他の補助金では採択時に企業名こそでますが、社長を紹介することは稀です。一方、出向起業等創出支援事業では、起業した方の元の組織名が出ています。しかも名前が通っているところが結構多いのです。
人材も含め、大手のリソースを使って起業することで、成功率は高そうです。これまでは、新規事業をやりたくても、勤めながらの起業ができず会社を辞める方が多くいましたので、社員という身分が保障されているので起業にともなうリスクは軽減できるのもいいですね。

(書き方のTIPS)
サンプルの資金調達計画は、ベンチャーキャピタルを中心にした計画になっていました。会社からの支援があることを想定されているからかもしれません。起業融資で賄う人もいるとおもいますので、申込する金融機関と融資制度などを書き込んで置くといいと思いました。

2.利用の課題

チャレンジする方には、安全な起業環境があるので良い制度です。ただし、組織は慣性で動いている部分があります。組織が活性化し、組織内外へのPRだからといって、組織が動いてくれればいいのですが、新しい制度が導入なかなか理解されないといった会社も多いようです。
慣性の法則で動く組織にとっては、新しい風はめんどくさい話なのです。男子の育休制度も社会的なニーズがあるけど中々組織で浸透しないことに似ています。全員ではないですが、組織も利用する社員も思考停止していることが原因かと思います。それだけ、今は、日々の仕事が忙しいことを知ってて書いています。

起業していくことに加え、「組織内部における出向への理解」が利用における最大の課題になってきそうです。また、出向制度で、自社には戻らないつもりの起業を検討している人もあるかとおもいますが、戻る予定の方は、何年後かに会社にもどった時に、どんなポジションや部署でもどるかについても想定しておいたほうが良いでしょうね。できれば新規事業開発を行うような部署があれば、そこにいったん戻り、自社で新規事業開発をしていくことができると相乗効果も期待できそうです。

3.人件費の負担

会社にとってのメリットを訴える、起業への思いを上司に聞いてもらうところからスタートされていると思います。直属の上司というより1段上、2段上といった上司との話し合いなので、話し合いのテーマは、「事業の会社側のメリット」、「投資計画」、「収支計画」、「期間」といったことなどです。こうした話だけでもとても良い機会ですよね。出向制度(人事面の待遇)については、上司というより人事との話になります。

気になるのは、起業期間中の人件費負担についてですよね。
基本的には、新規事業で得た収益を出向者の人件費に充当することになります。現状との給与で差額(会社からもらっている給与のほうが高い場合)負担をお願いできるのであれば、望ましいですね。
ただし、会社都合での出向であれば、出向時の人件費負担は会社持ちですけど、起業が社員の意思によるものであれば、会社に”籍”を残しておいてもらうだけの手続きになることを覚悟しましょう。

さらにいうと、社会保険負担分など会社から請求される可能性もありますので、人事部との話し合いはしっかりしてきましょう。

会社の状況により、人件費負担がしてもらえることに越したことはないですが、もし人件費負担が得られなくても、在籍しなががら給与を確保したり、新事業で売上を確保することを考えたり、収入が発生するまでの運転資金を融資で確保するなど方法はあります。(⇐2022/9/23追記しました)

では また