兵庫県の補助金 起業家支援事業助成金<書き方>

相談事例

起業家支援事業助成金について(2023年度版)

1.起業家支援事業助成金とは?
兵庫県では定番の助成金です。毎年募集があり、前年の4月1日から翌年の1月末までの間に起業または起業予定の方向けに、募集が行われ、上限100万円(補助率1/2)という助成金の制度です。今年(令和5年)でいうと、令和4年4月1日~令和6年1月末までに起業を予定している方が対象となります。

社会的事業枠、東京23区枠、就職氷河期世代枠は、申し込みが少なかったのか、令和5年8月2日まで追加募集があるようです。
2024年度の申請様式も大きな変更はなかったようですね。物価高騰とポストコロナのところはなくなったので読み飛ばしてください。

2.募集期間の目安
4月中旬から6月末といったところです。商工会議所によっては起業者向けにセミナーを行うところもありますので、商工会議所のイベントページをチェックしてください。ひょうご産業活性化センターさんが相談に乗ってくれているようですので、助成金の相談に行くのもありですね。
私も以前、西宮商工会議所さんで作成セミナーの依頼をされたことがありますが、満席だったので人気の助成金であることはいうまでもありません。

3.使い方
助成金はありがたいのですが、募集枠が少ないので結構採択されにくいものです。一方で、家賃の補助やパソコンなどの購入費に充てられる補助金なので、採択されると心強いですね。パソコンを買える補助金はあまりないし、空き店舗補助金などとの併用もできるので、初期投資がかかる業種、例えば店舗を構えるような事業内容の方であればトライしたいところです。
昨年は、Uターン向けの枠が再募集されていたので該当する方はねらい目ですね。
ただし、他の枠は、採択されにくいので高額のお金を払って専門家に書いてもらうのはお勧めしません。専門家が書いたところで、予算規模が小さい補助金なので採択率は変わりはありません。

起業家支援事業助成金の記載内容について

1.構成

助成金の申請書は、毎年少しフォーマットが違いますが、例年「様式1」~「様式3」の3部構成になっています。
様式1:申請書×1頁
様式2:事業計画書×5頁
様式3:助成金の使途×1頁

起業家支援助成金 様式1

様式1:起業家支援事業 事業計画申請書

2.各項目の記載内容(様式1)

(1)様式1は、「起業家支援事業 事業計画申請書」です。右図のようなもので、これは、いわば表紙です。
赤線のところを順番に書いていきます。

①日付を和暦
②事業所名(会社名・屋号(起業前で決まっていない人は氏名)、代表者職と氏名、電話番号、メールアドレス
③表
枠に申し込むかと、起業と第二創業(※)、空き家活用を行うかどうかの選択をします。
(※)第二創業枠は、現在の事業と日本標準産業分類の中分類(2桁分類)の異なる業種に属する事業分野に進出することを言います。
④には<<事業計画の名称>>を書きます。
事業計画の名称とは、タイトルのようなものですが、様式2を書いてからまとめてタイトルを考えて書いたほうが良いと思いますので、詳細は様式2の説明を参照してください。
⑤署名欄
最後に署名欄がありますので、自著です。サインをして提出してください。
提出先はお近くの商工会議所・商工会ですので、提出時に署名をいれればいいと思います。洋式のチェックは商工会議所・商工会でも見てくれます。

3.各項目の記載内容(様式2  申請者の概要)

全体を通しての注意事項:起業家支援事業助成金のページ数を増やすことはできません。小規模事業者持続化補助金は、ページ数の上限はあるけど、ある程度広げることができますが、この補助金はページ数が変わらないようにしてください。

(1)事業者の名称、所在地等

記入枠の一番左にある丸数字(①、②、③、④、⑤、⑥)を見ながら必要個所に記入します。丸数字は、様式1の申込枠の名前(①一般事業枠など)と連動しています。つまり、申し込みの枠によって記載するところが違います。例えば、再チャレンジ枠は、前回の起業の日付や廃業日などを記載するようになっているようです。

(2)代表者の情報

記入枠の左の丸数字は同じですね。記入枠の一番下に過去の経歴【ふるさとは経緯や理由も記載】
となっていますね。

過去にどんな仕事をしていたかを時系列で書くことに加えて、事業化に至ったきかっけなどを書きます。人によっては履歴書のように学歴と職歴を書く人もいるのですが枠も小さいので、ポイントを絞って書きましょう。ずばり”起業しようとしている事業”に関係がある職歴でいいです。日本政策金融公庫の創業計画書のポイントに近いですね。

3.各項目の記載内容(様式2  事業計画)

さて、いよいよ事業計画です。今回に限らず全ての補助金との共通点ですが、結論から伝え、審査項目を意識して補足を端的に書くのがポイントです。理由は、助成金や補助金は審査する人間(審査員)が多くの書類に目を通します。長い文章を書いても何が言いたいのか伝わらないこともあるので、先に結論を出して、簡潔に書いていきましょう。そのほうがわかってもらいやすいですね。

(1)事業計画の名称の書き方

事業計画の名称は、いわば起業内容のテーマです。審査員に事業のイメージが伝わり、この一行から事業計画書を読む気にさせるものであることが望まれます。起業家助成金のホームページ上に、前年までの採択事業が掲載されていますので、そちらを参考に「誰に」「何を」「どのように」が入るようにまとめるといいでしょう。

(2)事業の概要の書き方

枠の上に説明書きがあり、「事業の内容をわかりやすく記載してください。(具体的なニーズや背景、起業に至った動機、将来の展望等のポイントを明確に記載してください。)」と指示されています。これらの項目はしっかり書いていきましょう。

ヒントを項目に沿って書く時、私はこれらを以下のような【】でタイトルにしてしまいます。サンプルを見てください。

事業内容は〇〇です。
【具体的ニーズ】
【背景】
【起業に至った動機】
【将来の展望】

事業内容には、一般的な業態どんなことをやっているか手短に書きましょう。奇をてらわずに、いわゆる○○店ですなど、読み手がイメージできる業種で説明するといいでしょう。伝えられない事業は、事業を始めても理解してもらうのに時間がかかるので軌道にのるまで苦労する傾向があります。

【具体的ニーズ】と【背景】・・・社会的な環境の変化、地域における課題などを捕えて、”ニーズ”を(具体的に誰が困っているのか、または、誰が喜ぶ内容になっているか)について書いていきましょう。
【起業に至った動機】・・・自分がこの事業をやる理由、自分にしかできない理由ですね。
【将来の展望】・・・将来社会からどう見られていたいかについて書きます。
具体的な売上規模など数値をいれると具体的になっていいですね。また、申請する”枠”に合わせて書くケースも見受けられます。
下記のサンプルには、女性起業家枠があったころの申請例なので、事業を通じて具体的にどんな方法で女性の社会進出に貢献できることを描きました。

(2)事業の手法

「開発・提供する商品やサービス等を示し、具体的内容、特徴・特色、それらを生み出すための取り組みをわかりやすく記載してください。」という指示がありますので、それにそってまとめていきます。

【提供する商品やサービスの具体的内容】・・・一般的な商品サービスの名前とその内容を書きましょう。学習塾を例にすると、学習塾といった一般的なサービスに、具体的内容として24時間視聴可能なオンライン授業、現役大学生による個別指導中心、大学受験に役立つ英語資格取得重視などをつけて具体化します。

【特徴とそれを生み出すための取組】・・・「特徴は○○です」と端的に示すことができることが求められます。特徴は顧客に取って価値があることを書きましょう。一人では判断しにくい場合、無料の経営相談などを利用し、見てもらった方がいいですね。この助成金は商工会、商工会議所経由で提出するので、経営指導員の方と話し合ってください。

例として、学習塾のケースでは、現役大学生による個別指導中心でも、一流国公立大学の学生を集めたのか、教師を目指す人たちなのか、お笑い芸人を目指す人が教えるのかなどいろんな特徴があると思います。「(2)事業の概要」のニーズに沿った価値が書けているともっと良いでしょう。英語資格が大学受験に導入されることに不安を感じている保護者のニーズがあれば、英語資格(TOEFL80以上)をもつ豊富な教師陣がサポートしてくれた方が、価値がありますよね。

”素材にこだわったラーメン”など、”こだわり”は使いがちですが書くのであれば、少し踏み込んで”何に拘っているのか”を書いてください。出汁へのこだわり、麺へのこだわりなど、全国の調達先を調べて厳選したのかなどです。飲食店の場合、作り方と素材それぞれに特徴を足すと良いと思います。例えば、作り方:実家が昔商売をやっていた時のレシピを母から教わったもの、素材は、いくつかの材料を試したが兵庫県産に拘って市場で調達しているなどです。

生み出すための取組については、特徴をどのように生み出しているか(源泉)についてなのか、仕入れ調達からサービス提供までを書くのか、”それら”がどちらを指しているのか判断に悩むところです。なので、【特徴とそれを生み出すための取組】とまとめました。

英語資格取得専門の学習塾なら、サービスは教育提供です。その為の取組として考えられるのは、講師の選定、授業の実施方法、テキストの作成といったものになります。独自の取組があると良いですね。事例も、社会人時代のマニュアルを作った経験を活かして、品質維持をすることやオンラインで仕事をするための情報共有ツールを入れる予定などについて記述しています。

(4) 事業の準備状況

事業の準備状況は、サンプルも書かれているので書きやすいですね。業種によって必要となる資格は、J-NET21などのサイトを参考に専門家や関連機関で確認を取りましょう。

(5) 事業のPRポイント

「審査のために重要な事項ですので、分かりやすく記載してください。」となっていますね。

・新規性・独創性・優位性
「開発・提供する商品やサービス等と、従来からある類似商品・サービス等を比較した場合の新規性・独創性・優位性について記載してください。」と書かれていますね。比較対象を用意して、違いを整理していくと書きやすいです。

【新規性】・・・従来型のサービスと比較しながら新規性について説明します。
「提供するサービスの新規性は、****で、****といった点で従来のサービスと違う。」という文例に納めて考えましょう。
新規性は、世界初、地域初など○○初は探せばいろいろあります。ある地域には良くあるが、出店する地域にはないものなどです。むしろ、同じような店が既にある場合、何かの違いは必要になりますよね。他業種のアイデアを持ち込むこともありですね。

【独創性】・・・創意工夫があり自分だからこそできることです。資格ではなく、その活用方法などです。さらに、それができる理由もあると説得力がつきます。自分が培ってきた人的資源でビジネスに行かせるもの(専門分野、対人関係能力、業界知識、職務経歴)

【優位性】・・・優れているポイントですね。同じような他社サービスと比べて何が優れているかを書いていきます。学習塾は非常に多くありますが、狙っている顧客層(ターゲット)が重なった時に選んでもらえる理由はなんでしょう?生徒を守るためのセキュリティー対策、個室化など、”安さ”&”品質”以外で見つけてください。

・市場性(成長性)
「商品・サービス等の市場性(顧客ターゲット、市場規模、販売先等)や将来性について、数値等を用いて具体的に記載してください。」と書かれていますね。

顧客ターゲット・・・属性(年齢・性別・職業・家族構成・所得)、地域(住所やその地域の気候)、心理的特徴や行動的特徴などで層を分けます。あまり広げすぎてもマーケティング戦略が実行できないので、広告を出して反応が得らえるターゲットして想定しましょう。学習塾では、家族構成として子供が一人、所得水準や子供の学年、親の職業などによってターゲットターゲットを絞り込むことができるでしょう。商品の種類によっては、行動的特徴、心理的でターゲットを絞り込んだほうがいいでしょう。

市場規模・・・顧客ターゲットが一体どれぐらいの頻度で年間いくら購入するのか数字の裏付けをつけていきます。提供する商品によっては、市場全体の規模がわかるものもあります。エステティックサロン業、飲食業といった大きなくくりでレポートを入手することができます。そういったレポートを活用して、自分のターゲットにちゃんと届くのか、自分の出店地でちゃんと顧客が取れるのかなど計画を立てましょう。

販売先・・・具体的な販売先をいくつかリストアップしましょう。BtoBでは具体的な社名などまで記載するといいでしょう。BtoCならどこで売ることを考えているか書くといいでしょう。(計画で大丈夫です。)

・マーケティング戦略
「事業を実施する場合のPR方法、販売予定価格、マーケティング手法などを具体的に記載してください。(ウィズコロナの観点からの取組があればあわせて記載してください。)」です。

マーケティング手法・・・STP分析、3C分析などをマーケティング手法といいますが、ここで要求しているのは、ターゲットや優位性など既に聞かれている為、違うものでしょう。「顧客にどのように価値を届け、いい関係性を維持していく計画にあるか?」についてです。PR方法と少し内容が被らないようにしましょう。

PR方法・・・実際のPR方法ですね。周知・集客の方法として何を用い、最終的に顧客になってもらうためにどのようなアクションをするのかなど流れでもって説明しましょう。

 

・地域経済活性化への波及効果
「事業が実現されることにより、地域経済の活性化へどのような効果があるかを記載してください。」事業をすること自体で地域経済にとってはプラスになりますので、どんな風に地域に貢献したいか具体的に書くといいでしょう。魅力的な店になることで街が活性化する、眠っていた資源の有効活用をする、就職困難期の若者に働く場所を提供するなどなどです。

(5) 事業のPRポイントは、審査項目でもあります。漏らさず書くことはもちろんですが、”新規性・独創性・優位性”、”市場性(成長性)”、”マーケティング戦略”、”地域経済活性化への波及効果”のそれぞれに整合性があるか全部書き上げた上でチェックするといいでしょう。商品と市場の特性に応じたマーケティング戦略になっているか今一度確認しましょう。

(6) 物価高克服・ポストコロナに関する対応

→ 令和6年度は物価高克服などの項目がなくなっています。この項目は飛ばしで大丈夫です。

物価高克服・ポストコロナ枠(県内学生枠・留学生枠含む)を申請する場合の記載項目ですね。物価高で変わること、ポストコロナで変わったことについて自分なりに前提を置いて、それにどう対処するのか書いていきます。

では、物価高を見据えた場合、値段を上げるのはやむを得ないとして、顧客離れにならないようにするにはどのような対策があるでしょう。飲食店であれば、メニューそのものを刷新して、値段がわからないようにするなどの方法もありますし、大切な顧客は逃さないようにSNSなどで蜜に情報発信しファンになってもらい変化を受け入れてくれるよう関係性を維持することもあり得ます。

ポストコロナでは、インバウンドへの対応もありますりオンラインは廃れるかもしれません。どのように変化の流れを読み、それに対応するのか考えてみましょう。

(7) 事業(創業・第二創業)のスケジュール

事業の準備状況(前掲)で実施する項目、この後に(様式3)の「助成金の使途」に記載する内容、「マーケティング戦略」(前掲)をいつするのか、スケジュールに記載します。既に出てきている項目をスケジュールにするだけなので難しくはないですね。

3 事業見通し

右欄に計算した根拠が求められます。

・売上=客数×客単価×稼働日数×月数(飲食店のケース)
・人件費=人員の単価×月数、1か月あたりのバイトの給与×月数
・家賃=月額費用×月数

特に客数やメニュー価格については、(5)事業のPRポイントに記載したターゲットと販売方法と辻褄を合わせましょう。積算は業種によって客単価を替えてください。人件費は、人を雇う場合の人件費です。家賃、水道光熱費、通信費その他経費などは見積書をもらってなるべく具体化しましょう。創業して始める事業ですので、把握できるものはしっかりと抑えておきたいですよね。どんな費用が掛かるのか調べたい方は、J-NET21の類似業種の創業費用を参考にしてください。

4 開業に必要な資金の調達方法

特に注意は必要ないですが、(3)助成金の起業家支援助成金は、後述(様式3)「助成金の使途」の           助成金申請額Ⅰ(e×1/2 ※上限100万円)の額と一致させるようにしてください。

以上が「起業家支援事業助成金」の具体例を交えた記載方法です。兵庫県内の商工会・商工会議所、兵庫よろず支援拠点などで相談ができるようですので、上記を参考にコンサルタントの方と相談してください。私もどこかの相談所でお会いできる事を楽しみにしています。