中小企業のブルーオーシャン戦略

相談事例

ブルーオーシャン戦略は中小企業にも使えるフレームワークなのか?

ブルーオーシャン戦略は競争回避、高い収益力、成長の機会などを得られるとても魅力的な戦略です。「ブルーオーシャン戦略」(著W・チャン・キム+レネ・モボルニュ)が日本で発売されたのが2005年なので、間もなく20年たつビジネスフレームワークです。

フレームワークなので、SWOT分析、PPM分析、ビジネスモデルキャンパスなどのフレームワークと同様どれが優れているとかはありません。むしろ組織目的に沿って、時に熱く、時に冷静に分析するきっかけになればいいわけです。

前著を読んだ時に感じていたのが、シルクド・ソレイルがブルーオーシャン戦略により斜陽産業だったサーカスを高収益事業にしたことが書かれていたのですが、ブルーオーシャン戦略のフレームワークを使って今の事業にいたったのか読み取れなかったことに疑問を持ちました。

どこかで使う機会があれば、ブルーオーシャン戦略の進め方もやってみたいと思いながら私自身つかうケースはありません。多くの企業では、戦略変更をしたくないからなのか、それとも既存のフレームワークで、ブルーオーシャン戦略の得意とする新市場への探索ができているからなのかもしれません。ただ日本の大企業でもブルーオーシャンの探索に成功した事例は数少なく、フレームワーク自体はあまり積極的に取り入れられていないように思います。

言葉のインパクトはあるので、フレームワークというより、それは”レッドオーシャン”、こっちは”ブルーオーシャン”というレッテルを張るために用いられることは割とありますね。スタートはフレームワークと戦略の考え方なので、取り入れたいと最近思うようになりました。

 

既存のフレームワークを補完する部分

ブルーオーシャン戦略のフレームワークの適用を考えるようになったのは、新規事業進出の相談を受けるようになったことがきっかけです。これまで私もニッチな市場を指す言葉として、ブルーオーシャンを使っていたのですが、うまくニッチな市場を探せる方法が見つからず、ブルーオーシャン戦略をインターネットの内容を鵜吞みにせず著書を紐解くことから始めました。読み始めるのが遅いですね。

これまで新規事業の相談をする場合には、新規事業開発のプロセスを社内に浸透させるため、大手企業の成功事例のプロセスを相談先に導入しようとしていたのですが、浸透するのに時間がかかるのが課題でした。また、最終のビジネスアイデアの実行決定を支援先の判断で行うことをお勧めすると、なんとなく”最後は多数決”と”社長の腹決め”といったところで終わることに少なからず疑問を持つことがありました。透明性もあり十分使える流れではあるのですが、市場の可能性については、既存市場に何らかのニッチな分野で進出することを目指しておりスケールが期待できないといった課題がありました。

むしろ新規事業開発のプロセスの多くは、新しいレッドオーシャンに向かうお手伝いをすることで中小企業にとてはリソースを分散するかえって悪手であることも懸念されます。

ブルーオーシャン戦略が他のフレームワークを補完するのは、まさにここではないかと思います。「新しい市場で高収益企業へ転換したい。」これが、中小企業が求めているところです。新しい事業をするのが目的ではありませんよね。

ブルーオーシャン戦略のフレームワークである”戦略キャンパス”がこうした新市場を分析するツールであり既存のフレームワークと意識して使い分けることで、企業にとって魅力的な市場を探すことに役立つことが期待されます。

 

戦略キャンパス

私が考えるブルーオーシャン戦略のフレームワークが、一番浸透していない理由は、この”戦略キャンパス”が利用しにくいことが原因かと思います。

SWOTなら、強み、弱み、機械、脅威などそれぞれ書いてみてくださいでスタートできますが、戦略キャンパスは、競合市場の競争の要因やライバル企業が何に投資をしているかなど調査をした上ではじめて、図にしていくことが求められます。

具体的な事例として、アイスクリームチェーンの戦略キャンパスを描いてみましたが、横軸の”優れた製品品質とバラエティ”、”ブランドとデザイン”、”場所と立地”、”顧客体験の重視”、”マーケティングと宣伝”、”効果的なコスト管理”といった項目の洗い出し方も、縦軸の評価方法は裏付けのデータを取りながらで、かつミーティング参加者が納得しながら進めなくてはいけないので、なかなか骨の折れる分析です。公式のブルーオーシャン戦略の進め方みたいな決まったものはなさそうなので、各コンサルタントのファシリテートによって変わってくると思います。また、コンサルタントに丸投げしても失敗するだけと書かれていますので、ここはしっかりと取組ポイントです。

 

因みに「横軸の項目を洗い出してみましょう。普段、生き残りのために実施している活動などから考えましょう。」といった安易なスタートでは無言の会議が始まるか、社長が痺れを切らしてしゃべりすぎてしまうかのどちらかです。

フレームワークはメンバーで考えるための思考ツールなので、一人で話したらだめ、社長のカリスマで押し切るのでは、きっとかわりません。社内の意識改革も含めて、戦略キャンパスをつくるができれば、ブルーオーシャン戦略の考え方にそって中小企業でもうまく適用できるのではないかと思います。
大企業では全員の意識改革は難しいでと思いますが、中小企業であれば組織も動かしやすいので可能かもしれません。

ブルーオーシャン戦略を中小企業で進めるのが難しい点

マーケティング戦略と思って取り組むとブルーオーシャン戦略を進めるための組織運営なども取り上げられます。業界全体や会社が当たり前と思っている競争からいったん外れて、新市場を目指すので一人社長で検討していると考えの限界が生まれると思います。また、組織がワンマン社長が取り組んでも鶴の一声できまってしまうのがオチなのであまり向かないでしょうね。

ブルーオーシャン戦略をすすめるのであれば、コンサルタントとしてはあくまでもファシリテーターでしかないので知見の偏りがあると難しいですね。逆に小規模の組織であっても風通しの良い組織であれば探索はしてけるでしょう。ブルーオーシャン市場が見つかるかはまた別の話ですが、フレームワークどおりにすすめることはできるはずです。

 

では